物流のプロフェッショナル集団、大阪デリバリー株式会社のeスポーツビジネスへの取り組みについて副社長の木田さんと人事・広報担当の長谷川さんにお話を伺いました。

大阪デリバリー株式会社は、繊維・アパレル業界を中心に、総合物流業務請負事業・人材派遣事業・倉庫保管サービス事業などの物流業をメイン事業に、関西を中心に多くの実績を積み、東海エリア、関東エリアにも事業所を展開する物流のプロフェッショナル集団です。保育事業や社内にeスポーツチームを設立し、社会人eスポーツリーグへの出場やプロeスポーツチームのスポンサードなどにも積極的に取り組まれており、物流業以外にも事業領域を広げている企業です。
©大阪デリバリー株式会社 All rights reserved.

Q 社内にeスポーツチームを作ったきっかけとは?

eスポーツを会社として始めてから3年程経つのですが、eスポーツ好きの社員から「独立してゲーミングチームを作りたい」と話があった事がきっかけです。eスポーツが会社に新しい色を付けるような優れたコンテンツになりそうだなと思いましたし、これがあることにより社員の仕事のやる気に繋がったり、一つの息抜きにもなったりするのではと思いました。
なので、「社内で作ればいいじゃない?」ということで、会社で事業としてeスポーツに取り組むことにしました。

Q 御社のeスポーツへの取り組みを教えてください。

社内でゲーミングチームを立ち上げ、縁あってプロゲーミングチームのスポンサーとして協賛活動もおこなっております。社内のゲーミングチームはチーム名を「Team OE」と名付けて、現在では7名で「金曜日はゲームの日」として活動をしています。

TeamOE アイコン02©大阪デリバリー株式会社 All rights reserved.

スポーツなので勝ち負けを意識するからこそ面白く、「仕事」として取り組む以上は「勝てるチームにしよう!」という思いで活動しています。Team OEがイベント等で勝って知名度が上がれば会社に新たなブランドイメージもついてくると思います。ゆくゆくはチームにスポンサー等が付くぐらい注目を浴びるようになれば理想ではありますね。

TeamOE 練習風景©大阪デリバリー株式会社 All rights reserved.

TeamOEとしては、Apex LegendsやRainbow Six Siegeなどのタイトルで活動をおこなっています。社会人リーグのAFTER 6 LEAGUEのApex Legends部門にも参戦し、YouTubeやTwitterなどのSNSを利用して配信活動なども取り入れ活動しています。

▼TeamOEの活動はこちらからチェック
➡ Team OE 公式YouTubeチャンネル

Q: eスポーツを取り入れて、社員や顧客先からの反響はいかがでしょうか?

当時では注目するのが早かったのか、弊社のような関連性のない事業者がeスポーツに取り組むというのは、周りの顧客からは珍しがられましたね。最近では、弊社のeスポーツへの取り組みに関心を持っていただいて取材等で取り上げてもらう機会も増えました。ですが、eスポーツが本業と関連性がないために社内における関心はまだまだ低いようにも感じています。自社の活動について知る努力をしてほしいとも思いますが、部としても活動の様子を知ってもらう努力もしていかなければと思っています。

反面、採用面に関しては、思った以上の効果を得られました。
高卒採用において、1校あたりに2000社以上の求人票が届く中、これまでの弊社は2000社あるうちの1社という位置づけだったのですが、eスポーツ部があることにより変わり種の中小企業として先生や生徒さんの目に留まるようになったのが大きいですね。実際にeスポーツ部への入部を希望して入社を決める方も出てきています。

また、物流×eスポーツで検索すると弊社のホームページが上位に出るのですが、SEO対策をしなくても検索上位に表示される効果は大きいです。
そういったところもあって、求職者や顧客先に見てもらえる機会が増え、より大阪デリバリーを知ってもらえるのは嬉しいです。

Q: eスポーツチームを発足した前後でチームメンバーの働き方はどう変わりましたか?

eスポーツを会社に取り込んだ当初は、会社全体に理解をしてもらうために様々な苦労がありました。

ついついeスポーツの活動に夢中になりすぎてしまい、本業を疎かにしてしまう方も中にはいたため、活動条件として業務評価や上司の推薦を定めたりして、本業に支障が出ないように対策をしています。

チームメンバーには「常に模範であるように」と伝えており、周りの理解を得る努力をしています。

Q: eスポーツビジネスに対しての課題等は感じますか?

課題は多くあると思いますが、eスポーツをこれまでのエンターテイメント市場と比べてみると、eスポーツにおいてもプレイヤー側だけでなく視聴者側に向けた技術の進化が必要だと思います。

これまでのスポーツもプレイヤー側と観戦者側のそれぞれの視点で技術開発が進み、盛り上がったものはたくさんありますよね。

結局、スポーツしかり劇場、お笑いも一般視聴者を巻き込んで集客しないと収益が出ない市場です。

業界の一部が盛り上がっているだけでなく、一般視聴者をどう巻き込んでいけるかですよね。

実際に自社のチームの応援でeスポーツの大会のライブ配信などを見ていても、2時間とかのうち数秒しか映らないこともありますよね。使われるゲームタイトルによると思いますが、視聴者が独自の視点で楽しめるシステムとかあればいいなと感じます。

Q: 今後のeスポーツ業界はどうなっていくと思いますでしょうか。

正直、まだまだ発展途上だとは思いますが、市場としては少し停滞しているような気がしています。

しかし、まだまだ、どうなるか分からない業界だからこそ続けていきたいと思っています。

日本のeスポーツ市場は、正直会社にeスポーツを導入した3年前とあまり変わっていないように感じ、「eスポーツ」というものの認知度も海外に比べるとまだまだ低いのではないでしょうか。文化や法律の違いからも難しさはあるのだと思いますが、日本のプロ選手たちが世界で活躍していることを知っている人も少ないと思います。

例えば日本が世界に発信しているアニメや漫画の題材に「eスポーツ」を取り入れたら、もっとこの業界に興味を持ったり憧れる方が出てくるんじゃないかな、とかも思ったり。

今後国内市場がどうなっていくのか未知な部分も多いので、発展を期待しながら、弊社もこの取り組みを頑張って継続させていきたいと思います。

あと、Team OEとしては、もうすこし試合で勝ってもらいたいってところですかね(笑)。

筆者の感想

eスポーツに取り組まれているからこその苦労や課題をお伺いして、改めてeスポーツビジネスが市場として成長中と感じました。ビジネス上では、まだまだ課題点が多く収益に繋がりにくい為、先行投資としてeスポーツを支えている企業の姿が見えてきました。eスポーツ市場への期待感と現状の停滞感がどこかもどかしさを感じている中で、日本の一つのエンターテイメントとして広く一般層まで浸透すれば、様々なビジネスが新しく生まれてくるであろうという期待感には共感を覚えました。